昇降デスクのデメリット
341点を数えたら後悔の理由は「下がらない」でした
そもそも、どんな商品か
昇降デスク(電動・ガス圧・手動で高さを変えられる机)を買って合わなかった、という話の中身を数字で確かめた記事です。実際に売られている341点を数えています。
おすすめの機種を選ぶ記事ではありません。買う前に知っておくと後悔しにくい、製品側の制約をまとめたものです。
まず結論だけ
- 上は341点中337点が110cm以上まで伸びるのに、60cmまで下がる製品は0点でした
- 4台に1台(83点)は、いちばん下げても72cm。身長173cm未満だと下げきれません
- 下限まで下げると341点中250点(73%)が天板の下650mmを割ります。今度はひざが入りません
- 電動の価格は中央値197,230円。手動19,800円・ガス圧23,060円とは桁が違います
昇降デスクの商品ページは、立って使っている写真から始まります。何cmまで上がるか、メモリーはいくつか、モーターは1つか2つか。
けれど「買って合わなかった」という話を読むと、上がらなくて困ったという声はあまり出てきません。出てくるのは、下の話です。
そこで、実際に売られている電動昇降デスク341点の高さを数えました。上は341点中337点が110cm以上まで伸びます。いっぽう、床から60cmまで下がる製品は0点でした。
デメリットは「立つ机」の側ではなく、「座る机」の側にありました。
結論:後悔の中身は「上がらない」ではなく「下がらない」です
先に結論を書きます。昇降デスクで合わないと感じる原因の多くは、下げたときの高さです。
表は横にスクロールできます
| 数えたこと | 結果 |
|---|---|
| 上限が110cm以上 | 337点/341点 |
| 床から60cmまで下がる | 0点 |
| いちばん下げても72cm以上 | 83点(24%) |
| 下限まで下げると 天板の下が650mmを割る |
250点(73%) |
上に伸びる性能はほぼ全機種が満たしています。下に下がる性能だけが、機種によって大きく違います。
そして厄介なのは、下げれば下げるほどよい、というわけでもないことです。下げると今度は、ひざが天板に当たります。ここが3つめの数字です。
そもそも国は「60〜72cmで調整できること」と書いています
まず基準を確かめます。厚生労働省の情報機器作業のガイドラインは、机の高さについてこう書いています。
高さ調整が可能な机又は作業台を使用する場合の調整範囲は、大部分の作業者の体形に合わせることができるよう、床からの高さは60cm〜72cm程度の範囲で調整できることが望ましい。
上限の指定はありません。どこまで高くできるかは、国の関心事ではないということです。国が求めているのは、下は60cmまで下がることです。
なぜ60cmかというと、小柄な方に合わせるためです。同じガイドラインは「椅子の高さを最適に調整した後、机の高さを調整するとよい」という順番も決めています。椅子を体に合わせると座面が下がり、それに合わせて机も下げる必要が出てきます。
机の高さそのものの話はデスクの高さは何cmが正しい?70cmが標準ではなくなった理由にまとめました。
341点を数えたら、60cmまで下がる製品は0点でした
オフィス家具通販のオフィスコムで「電動昇降デスク」として掲載されていた356点(2026年8月6日時点)を全ページ取得し、商品名に高さの調節範囲が書かれていた341点を機械的に集計しました。
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| 調べた項目 | 結果 |
|---|---|
| いちばん下げたときの 高さの最小 |
610mm(3点) |
| 60cm以下まで 下がる製品 |
0点 |
| 下限の中央値 | 650mm |
| 上限が110cm以上 | 337点/341点 |
上は9割以上が110cm以上まで伸びるのに、下は60cmに届く製品が1点もありません。 いちばん低い610mmでも、指針の下限より1cm高いところで止まります。
これは1社の品ぞろえの話ではなく、電動昇降デスクという製品カテゴリ全体の性質だと考えたほうが安全です。昇降の機構(脚の中に入っているモーターと支柱)が、それ以上縮まないためです。
4台に1台は、下げても固定デスクより高いままです
下限の分布を見ると、もっとはっきりします。
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| いちばん 下げた高さ |
件数 | 目安に なる身長 |
|---|---|---|
| 610〜634mm | 141点 | 146〜152cm |
| 650mm | 76点 | 156cm |
| 670〜700mm | 41点 | 161〜168cm |
| 720mm以上 | 83点 | 173cm以上 |
下限が720mm以上の製品が83点、全体の24%あります。これはいちばん低くしても、市販の固定デスクに多い700mmより高いということです。
身長173cm未満の方がこの83点のどれかを買うと、最低まで下げても、まだ高い机を使い続けることになります。 昇降デスクを買ったのに、高さが合わないままになるわけです。
(身長の目安は、業界団体の式「机の高さ=身長×0.25+身長×1/6」から逆算したものです。あくまで目安で、脚の長さは人によって違います)
下げると、今度はひざが入りません
ここが、いちばん見落とされている点です。
机を下げても、脚を入れるのに必要な高さは変わりません。 ひざの裏の高さも太ももの厚みも、机の高さでは変化しないからです。つまり机だけを下げると、天板の裏にひざや太ももが当たります。
必要な高さは、JISの計算式に日本人の実測値を入れると650mmでした(デスクの下は何cm空いていればいい?に計算を書いています)。
341点について、下限まで下げたときに天板の下650mmを確保できるかを数えました。
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| 条件 | 件数 |
|---|---|
| 下限まで下げると 650mmを割る |
250点(73%) |
| 割らない | 91点(27%) |
(天板の厚みを30mmとして計算)
4台のうち3台は、いちばん下まで下げると脚が窮屈になります。
これは製品の欠陥ではありません。規格は、調節できる家具なら小柄な方から大柄な方までの範囲をカバーすればよいとしています。下限が低いこと自体は、小柄な方に必要です。問題は、下げられるからといって下げてよいわけではない、と商品ページに書かれていないことです。
価格の中央値は約20万円。方式で桁が変わります
昇降の方式は3つあります。同じ通販の「スタンディングデスク・昇降デスク」カテゴリ446点を方式ごとに分けると、こうなりました。
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| 方式 | 点数 | 税込価格 の中央値 |
下限高さ の中央値 |
|---|---|---|---|
| 電動 | 353点 | 197,230円 | 650mm |
| 手動レバー ・ハンドル |
16点 | 19,800円 | 720mm |
| ガス圧式 | 5点 | 23,060円 | 765mm |
電動と、手動・ガス圧では価格の桁が違います。そして手動とガス圧は、下限の中央値が72cm前後です。指針の下限どころか、固定式の机に望ましいとされる65〜70cmにも届いていません。
安く済ませたい場合の選択肢が手動・ガス圧になりますが、その2つは「下げる」性能をほとんど持っていません。 立つために買うなら成立しますが、座る高さを合わせたいなら、目的を果たせない可能性があります。
昇降する部分は「壊れる部品」として見ておく
固定式の机にはない部品が増えます。モーター、支柱、コントローラー、配線です。
机・テーブルの規格はJIS S 1031(オフィス家具-机・テーブル)で、昇降するものは「いちばん低い位置と、いちばん高い位置の両方で試験する」と決められています。
確認できなかったこと: その試験を何回繰り返すのかという数値は、無料で公開されている範囲には出ていませんでした。規格本体の表に載っていますが、規格そのものは有料です。ここに具体的な回数を書くのはやめます。
いっぽうメーカー側は、独自に「5万回の昇降耐久試験」といった数字を出していることがあります。国の規格が何回と決めているかと、メーカーが何回試したかは別の話です。商品ページに回数が書いてあれば、それはメーカー自身の試験です。
保証の目安は業界団体の資料で2年です。オフィスチェアの耐久性の話はオフィスチェアの寿命は何年?にまとめました。
天板とフレームだけの固定デスクなら、壊れる部品はほとんどありません。 昇降デスクは、そこに電気で動く部品を足すことになります。
立って使うことについて、国が書いていること
「立って働くと健康によい」という話が昇降デスクの前提になっています。国のガイドラインにも、立つことは出てきます。
座位のほか、時折立位を交えて作業することが望ましく
基本は座位で、そこに立つ姿勢を「時折」交ぜる、という書き方です。 立ちっぱなしを勧めてはいません。
ここで考えたいのは、その「時折」のために机が上がる必要があるかどうかです。席を立って歩く、別の場所で立って作業する、という方法でも姿勢は変わります。机を昇降させるのは手段の一つで、唯一の方法ではありません。 約20万円を出す前に、一度考える価値があります。
買う前に確認しておきたいこと
商品ページで見るべき順番です。
1. いちばん下げたときの高さ(上限ではなく下限を見ます。ここが720mm以上なら、固定デスクより高い机になります)
2. 天板の厚み(下限の高さから天板の厚みを引いた数字が、ひざの入るすき間です。650mmを下回るなら、下げきらずに使うことになります)
3. 方式(下げたいなら電動。手動・ガス圧は下限の中央値が72cm前後です)
4. 保証の年数と、保証の対象(モーターとコントローラーが対象かどうか)
5. 天板の奥行き(モニターとの距離が取れるかはモニターの位置にまとめました)
向いている人/慎重になったほうがよい人
向いている人
- 立ち座りを切り替えたい人(そのために作られた製品です)
- 身長173cm以上の人(下限720mm以上の83点も選択肢に入ります)
- 天板の下に650mm以上を確保したうえで、その高さを固定して使える人
慎重になったほうがよい人
- 身長173cm未満で、座る高さを下げたい人(83点は下げきれません。下限の数字を必ず見てください)
- 予算が数万円の人(電動の中央値は約20万円。その価格帯の手動・ガス圧は下限が72cm前後です)
- 立つ予定があまりない人(固定デスクなら壊れる部品が増えません)
まとめ
上は341点中337点が110cm以上まで伸びるのに、床から60cmまで下がる製品は0点でした。 国の指針が求めているのは、上ではなく下(60〜72cmの調整範囲)です。
4台に1台(83点)は、いちばん下げても72cm以上。 身長173cm未満の方は、下げきっても高い机を使うことになります。
そして下限まで下げると、341点中250点(73%)が天板の下650mmを割ります。 下げれば解決、でもありません。
見るべき数字は、上限ではなく下限です。 そして下限の高さから天板の厚みを引いた数字が、あなたのひざの入るすき間です。
この記事の出典
この記事は、厚生労働省のガイドラインが示す机の調整範囲を確認したうえで、通販に掲載されている電動昇降デスク341点の高さを全ページ取得して機械的に集計し、下限の高さと脚のクリアランスを数えたものです。耐久試験については、JISが何を決めていて何を公開していないかを確認しました。
すべて2026年8月6日に確認し、集計をこの記事に再掲しています。
- 厚生労働省 情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドラインと解説(机の調整範囲60〜72cm・椅子を先に調整・姿勢を変えられるようにする)
- オフィスコム 電動昇降デスク一覧(356点・うち高さの記載がある341点を集計)
- JIS S 1031:2016 オフィス家具-机・テーブル(昇降するものは最低位置と最高位置の両方で試験する。繰り返し回数は規格本体の表にあり、無料で読める範囲には出ていません)
- JIS Z 8515:2002 人間工学-視覚表示装置を用いるオフィス作業-ワークステーションのレイアウト及び姿勢の要求事項
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