デスクの下は何cm空いていればいい?規格に計算式があります
デスクを選ぶとき、高さと奥行きは商品ページに書かれています。けれど天板の下がどれだけ空いているかは、まず書かれていません。
膝が引き出しに当たる、脚を組むと太ももが天板にぶつかる。座ってみて初めて気づく部分です。
調べてみると、必要な高さを求める計算式が規格に定義されていました。 そして日本人の実測値を入れると、市販のデスクの余裕は2cmしかないことが分かりました。
制度・データは2026年8月6日時点で確認しています。
まず結論だけ
- 必要な高さは計算できます。膝窩高+大腿厚+靴30mmが規格の式です
- 日本人の実測値を入れると650mm。固定デスクはこれを超える必要があります
- 市販の70cmデスクは天板下670mm。余裕は2cmしかありません
- 電動昇降デスクを下限まで下げると、341点中250点が650mmを割ります
結論:必要なのは650mmです
先に答えを書きます。
JIS Z 8515(人間工学-視覚表示装置を用いるオフィス作業)に、脚まわりの空間を判定する式が書かれています。
[座位大腿厚]+[座位膝窩高]+(靴の補正値)
膝窩(しつか)とは膝の裏側のことです。座ったときの、床から膝裏までの高さと、太ももの厚みを足して、靴の分を足す。この合計を超えていれば適合、という判定です。
そして規格は、高さを変えられない家具の場合は男性の95パーセンタイルの数値を使うと定めています。日本人の実測値を入れると、答えは650mmになりました。
市販のデスクは高さ700mmが主流です。 天板の厚みを30mmとすると、天板の下は670mm。必要な650mmを、たった20mm上回っているだけです。
規格には、判定の式が書かれています
まず式そのものを確認します。JIS Z 8515の「7. 測定」に、こう書かれていました。
「脚周りの高さが[座位大たい(腿)厚]+[座位しつか(膝窩)高]+(靴の補正値)を超えていれば、ワークステーションは5.4.2に従っていることとする」
続けて、どの数値を使うかも指定されています。
「工業製品の設計では、対象ユーザー群に対するクリアランスの計算に統計上の数値を使用する。高さ固定の家具には、対象ユーザー群の男性の95パーセンタイルの大たい(腿)部クリアランス高及び座位しつか(膝窩)高を使用する」
靴の補正値も、同じ規格の附属書に数値があります。
表は横に長いため、横にスワイプ(PCは横スクロール)してご覧ください。
| 補正の対象 | 補正値 |
|---|---|
| 床−大腿部下側 | 靴に対して30mm |
| 臀幅 | 軽装10mm 通常の服装25mm |
| 座位眼高 | 65mmまでの減少 |
出典:JIS Z 8515:2002(ISO 9241-5:1998)(確認日 2026-08-06)
規格はこの空間を「クリアランス」と呼び、「ゆとりのためのすき間である」と説明しています。 ぎりぎり入る寸法ではなく、ゆとりを持たせる前提の数字だ、ということです。
日本人の実測値を入れると650mmになります
式に入れる数値は、産業技術総合研究所(産総研)が公開している人体寸法データベースから取れます。
若年成人のパーセンタイル値は次のとおりでした。
表は横に長いため、横にスワイプ(PCは横スクロール)してご覧ください。
| 項目 | 男性95% | 女性5% |
|---|---|---|
| 座位膝窩高 | 452.2mm | 362.1mm |
| 座位大腿厚 | 168.0mm | 125.0mm |
出典:AIST人体寸法データベース1991-92(座位膝窩高 I15・座位大腿厚 I10・確認日 2026-08-06)
これを式に当てはめます。
452.2 + 168.0 + 30 = 650.2mm
高さを変えられないデスクは、天板の下が650mm以上空いている必要がある、という数字になりました。
女性の5パーセンタイルで計算すると、362.1 + 125.0 + 30 = 517.1mmです。体格によって必要量は13cm以上ちがいます。
市販の70cmデスクの余裕は2cmです
計算した650mmを、実際のデスクと比べます。
表は横に長いため、横にスワイプ(PCは横スクロール)してご覧ください。
| デスクの高さ | 天板下 (厚み30mmとして) |
650mmとの差 |
|---|---|---|
| 700mm(市販の主流) | 670mm | +20mm |
| 720mm(JOIFA推奨) | 690mm | +40mm |
| 680mm | 650mm | ±0mm |
| 650mm | 620mm | −30mm |
市販の700mmデスクの余裕は、わずか2cmでした。
ここに引き出しが付くと、その2cmは消えます。平机に薄い引き出しを付けただけで、大柄な方は膝が当たる計算になります。
なお、業界団体が72cmを推奨している理由のひとつが車いすの肘の高さ670mmでした。天板下670mmというのは、車いすが入らない高さであり、同時に脚のクリアランスもぎりぎりという高さです。2つの別々の基準が、同じ数字のところでそろっています。 72cm推奨の経緯はデスクの高さは何cmが正しいかを調べた記事にまとめました。
自分に必要な数値は、自分で測れます
上の650mmは男性95パーセンタイルの数値で、多くの人にとっては過剰です。自分の数値は、家で測れます。
1. 座位膝窩高を測る
床に足の裏をつけて座り、床から膝の裏までの高さをメジャーで測ります。太ももが床とほぼ平行、膝が90度になる姿勢です。
2. 座位大腿厚を測る
同じ姿勢のまま、座面から太ももの上面までの厚みを測ります。
3. 足して、靴の分を足す
1+2+30mm(室内で靴を履かないなら、この30mmは省けます)。これが、あなたに必要な天板下の高さです。
4. 今のデスクと比べる
床から天板の裏側までを測ります。3より小さければ、脚が窮屈になっている状態です。
確認できなかったこと: 身長から膝窩高や大腿厚を推定する式は、公的な資料では見つけられませんでした。身長が同じでも脚の長さと太ももの厚みは人によって違うので、実測するのが確実です。
昇降デスクを下げると、73%が足りなくなります
ここが、昇降デスクを使っている方に関わる部分です。
座面を下げても、脚のクリアランスに必要な高さは変わりません。 膝窩高も大腿厚も、椅子の高さでは変化しないからです。つまりデスクだけを下げると、脚が当たります。
前回調べた電動昇降デスク341点について、下限まで下げたときに天板下650mmを確保できるかを数えました。
表は横に長いため、横にスワイプ(PCは横スクロール)してご覧ください。
| 条件 | 件数 |
|---|---|
| 下限まで下げると 650mmを割る |
250点(73%) |
| 割らない | 91点(27%) |
(天板の厚みを30mmとして計算)
下限の中央値は650mmでした。 天板下に直すと620mmです。男性95パーセンタイルの650mmを、30mm下回ります。
これは製品の欠陥ではありません。 規格は、調節できる家具なら女性5パーセンタイルから男性95パーセンタイルまでの範囲をカバーすればよいとしています。下限が低いこと自体は、小柄な方に合わせるために必要です。
問題になるのは、体格の大きい人が下げすぎた場合です。 「いちばん下まで下げれば楽になる」と考えて下げると、脚が入らなくなります。自分で測った数値を下回らない範囲で下げるのが正解です。
昇降デスクの下限の分布は昇降デスクは下がる高さで選ぶという記事にまとめています。
天板の厚みが公表されていません
ここまでの計算には、ひとつ弱点があります。天板の厚みを30mmと仮定していることです。
実際に商品ページを確認したところ、天板の厚みは記載されていませんでした。 幅・奥行き・高さ・重量・耐荷重・材質(メラミン化粧板、パーティクルボード)は載っていますが、厚みはありません。
出典:電動昇降デスク PABLO-3D 幅1000(確認日 2026-08-06)
つまり、天板の下に何mm空くのかは、商品ページからは計算できません。 高さの数値は天板の上面までのものだからです。
さらに、フレームや梁が天板の下を横切っている製品もあります。 その場合、実際のクリアランスはもっと小さくなります。ここも公表されていません。
買う前にできるのは、メーカーに問い合わせることだけです。 「天板の厚みは何mmですか」「天板の下にフレームは通っていますか」の2つを聞けば、計算できます。
買う前に確認しておきたいこと
1. 引き出しを付けるなら、その分を引く
市販の700mmデスクの余裕は20mmです。薄い引き出しでも、それを超えます。 引き出し付きを選ぶなら、高さ720mm以上を検討する価値があります。
2. 脚の形と位置
コの字型・T字型・L字型で、脚と脚の間の空きが変わります。脚を横に伸ばす癖がある方は、高さより幅のほうが効きます。
3. 天板の厚みを聞く
前述のとおり公表されていないので、問い合わせるしかありません。
4. 昇降デスクは「下げられる限界」ではなく「自分の限界」で使う
下限まで下げられることと、下限で使えることは別です。自分の数値を測っておけば、どこまで下げてよいかが決まります。
向いている人/慎重になったほうがよい人
この計算が役に立つのは、膝や太ももが当たった経験のある方です。原因が高さなのか引き出しなのか、数値で切り分けられます。
体格の大きい方は、市販の700mmでは余裕が2cmしかないことを知っておく価値があります。引き出しなしを選ぶか、720mm以上を選ぶという判断になります。
慎重になったほうがよいのは、昇降デスクを下限まで下げて使っている方です。 341点中250点が、下限では650mmを割ります。楽になるつもりで下げた結果、脚が窮屈になっている可能性があります。
もう一つは、天板の厚みを確認せずに買おうとしている場合です。 高さの数値だけでは、天板の下の空間は分かりません。
まとめ
デスクの下に必要な高さについて、公開されている情報はこうなっています。
JIS Z 8515に計算式があります。座位大腿厚+座位膝窩高+靴の補正値30mm。 高さを変えられない家具は、男性95パーセンタイルの数値を使うと規定されています。
日本人の実測値を入れると、650mmでした。市販の700mmデスクは天板下670mmなので、余裕は20mmしかありません。 引き出しを付ければ消える差です。
自分に必要な数値は、家で測れます。 床から膝裏までと、座面から太ももの上面まで。この2つを足すだけです。
そして電動昇降デスク341点のうち250点(73%)は、下限まで下げると650mmを割ります。 下げられることと、下げて使えることは別です。
天板の厚みが公表されていないので、最後は問い合わせるか、実物を測るしかありません。
デスクの高さそのものの基準はデスクの高さは何cmが正しいかを調べた記事に、昇降デスクの選び方は下がる高さで選ぶという記事に、椅子の側は座面高の目安と商品表示のズレを調べた記事にまとめています。
この記事の出典
この記事は、JIS Z 8515に書かれている脚まわりのクリアランスの判定式に、産総研が公開している日本人の人体寸法データを当てはめて、実際の製品と比べたものです。650mmという数値は、この計算によるものです。天板の厚みは公表されていないため、30mmと仮定しています。
すべて2026年8月6日に確認しました。