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昇降デスクの選び方|上がる高さより「下がる高さ」で選ぶ理由

昇降デスクの商品ページは、どれも立って使っている写真から始まります。何cmまで上がるか、メモリー機能はいくつか、モーターは1つか2つか。比べる項目はだいたいそこに集まっています。

ところが、国が示している数値を読むと、力点が逆でした。求められているのは「下げられること」です。

そこで通販に並んでいる電動昇降デスク341点の高さを機械的に数えてみたところ、国の指針が望ましいとする60cmまで下がる製品は、1点もありませんでした。 それどころか、4台に1台は、いちばん低くしても72cmまでしか下がりません。

価格・仕様・制度は2026年8月6日時点で確認しています。

まず結論だけ

  • 国の指針が望ましいとするのは床から60〜72cmの調整範囲。上限の指定はありません
  • 電動昇降デスク341点を数えたら、60cmまで下がる製品は0点でした
  • 4台に1台は、いちばん下げても72cm。身長173cm未満だと下げきれません
  • 昇降部分はJISの耐久試験が2,500回、業界の保証の目安は2年です

下限の高さ別の一覧を見る →

結論:見るべきなのは、いちばん下げたときの高さです

先に答えを書きます。

昇降デスクを選ぶとき、最初に見る数字は「高さ○○〜○○mm」の左側の数字です。右側(どこまで上がるか)は、立って使う人以外にはあまり意味を持ちません。

理由は2つあります。

1つめは、国の指針が下側の高さを問題にしているから。 厚生労働省のガイドラインは、高さを調整できる机の調整範囲について、床から60cm〜72cm程度の範囲で調整できることが望ましいとしています。上限がいくつまで上がるべきかは書かれていません。

2つめは、下げるほうが難しいから。 上げるのは脚を伸ばすだけですが、下げるには機構そのものを短く畳む必要があります。実際に数えると、上は110cm以上まで伸びる製品が341点中337点あるのに、下は60cmに届く製品が0点でした。

以下、その根拠です。

国の指針は「60〜72cmの範囲で調整できること」

厚生労働省の情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドラインは、パソコンを使う仕事の環境について国が示している基準です。令和元年7月12日に出され、令和3年12月1日に一部改正されています。

机の高さについては、調整できる場合とできない場合を分けて書いてありました。

表は横に長いため、横にスワイプ(PCは横スクロール)してご覧ください。

机の種類 望ましい高さ
高さを調整
できない机
おおむね
65cm〜70cm
高さを調整
できる机
60cm〜72cm
範囲で調整できる
こと

出典:情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドラインと解説(確認日 2026-08-06)

固定式の65〜70cmという数字には理由が添えられていて、65cmと70cmが、それぞれ女性と男性が使う場合に必要な高さのほぼ平均値だと説明されています。

そのうえで、調整できる机には60cm〜72cmという、より広い範囲が示されています。下側が5cm広がっているのがポイントです。「大部分の作業者の体形に合わせることができるよう」という理由が書かれていました。

もう一つ、順番についての記述もあります。「椅子の高さを最適に調整した後、机の高さを調整するとよい」。 机を先に決めてから椅子を合わせるのではなく、逆だということです。

オフィスコム公式サイトで昇降デスクを見る ※ 公式サイトに移動します

341点を数えたら、60cmまで下がる製品は0点でした

では実際の製品はどうなっているのか。オフィス家具通販のオフィスコムで「電動昇降デスク」として掲載されている356点を全ページ取得し、商品名に高さの調節範囲が書かれていた341点を機械的に集計しました(オプション品3点は対象外、記載のなかった12点は集計外)。

結果はこうです。

表は横に長いため、横にスワイプ(PCは横スクロール)してご覧ください。

調べた項目 結果
いちばん下げたときの
高さの最小
610mm(3点)
60cm以下まで
下がる製品
0点
下限の中央値 650mm
上限が110cm以上 337点/341点

出典:オフィスコム 電動昇降デスク一覧(確認日 2026-08-06・全18ページを集計)

上は9割以上が110cm以上まで伸びるのに、下は60cmに届く製品が1点もありません。 いちばん低い610mmでも、指針の下限より1cm高い位置で止まります。

昇降デスクは「立てる机」として売られていますが、構造としては「座って使う机を、少しだけ高くもできるようにしたもの」に近いという見方もできます。

なお、これはオフィスコムの品揃えを数えた結果です。法人向けの通販なので、市場全体の傾向と一致するかどうかは確認できていません。

4台に1台は、いちばん下げても72cmです

下限の高さごとに件数を並べると、分布に偏りがありました。右端は、前の記事で紹介した計算式(デスクの高さ=身長×12分の5)を逆に使って、その高さが目安になる身長を出したものです。

表は横に長いため、横にスワイプ(PCは横スクロール)してご覧ください。

いちばん
下げた高さ
件数 目安に
なる身長
610mm 3点 146cm
620mm 3点 149cm
630mm 123点 151cm
634mm 12点 152cm
650mm 76点 156cm
670mm 30点 161cm
680mm 3点 163cm
700mm 8点 168cm
720mm 75点 173cm
725〜780mm 8点 174〜187cm

いちばん多いのは630mm、次が650mmです。ここまでなら身長150cm台の方でも合わせられます。

問題は下から3行目です。下限が720mm以上の製品が83点、全体の24%あります。 これはいちばん低くしても、市販の固定デスクに多い700mmより高いということです。身長173cm未満の方は、その机を最低まで下げても、まだ高いまま使うことになります。

昇降デスクを買えば高さの悩みは解決する、とは限りません。 4台に1台は、下げる方向にはほとんど動かない製品です。

身長から出した数値はあくまで目安です。体格・作業内容・椅子との組み合わせで適切な高さは変わります。実際に座って調整できる環境があれば、そちらを優先してください。

電動・ガス圧・手動で、下がる高さが違います

昇降の方式は3つあります。オフィスコムの「スタンディングデスク・昇降デスク」カテゴリ446点を方式ごとに分けると、次のようになりました。

表は横に長いため、横にスワイプ(PCは横スクロール)してご覧ください。

方式 点数 税込価格
の中央値
下限高さ
の中央値
電動 353点 197,230円 650mm
手動レバー
・ハンドル
16点 19,800円 720mm
ガス圧式 5点 23,060円 765mm
昇降しない
・その他
77点

出典:オフィスコム スタンディングデスク・昇降デスク一覧(確認日 2026-08-06・全5ページを集計)

下げたいなら電動、という結果になりました。 手動とガス圧は下限の中央値が72cm前後で、指針の下限どころか、固定式の推奨(65〜70cm)にも届いていません。

ただし手動とガス圧はそれぞれ16点・5点しかなく、数字としては参考程度です。この2方式は、キャスター付きのミニデスクやサイドテーブルが中心で、メインの作業机として売られている製品が少ないという事情もあります。

もうひとつ、値段の思い込みも外れました。ガス圧式が安いとは限りません。 ガス圧式のフォリット(幅1200mm)は47,990円で、電動シングルモーターのPABLO-3S(幅1000mm)の26,900円より高い値段です。

価格の中央値は約20万円。2万円台はむしろ例外です

電動昇降デスク353点の税込価格を並べると、想像とかなり違う分布でした。

表は横に長いため、横にスワイプ(PCは横スクロール)してご覧ください。

税込価格 件数
10万円未満 19点(5%)
10万円以上 334点(95%)
最安 25,990円
中央値 197,230円

内訳を見ると、353点のうちオカムラが174点、コクヨが129点で、この2社だけで86%を占めます。オフィス家具メーカーが法人向けに出している製品が大半で、通販でよく見る2万〜5万円台の電動昇降デスクは、この一覧の中では少数派でした。

具体的な3製品を並べると、価格差がどこに出ているかが見えます。

表は横に長いため、横にスワイプ(PCは横スクロール)してご覧ください。

製品 方式 高さ 天板
耐荷重
税込
PABLO-3S
幅1000
電動
シングル
680〜
1080mm
80kg 26,900円
PABLO-3D
幅1000
電動
ダブル
610〜
1270mm
100kg 47,900円
フォリット
幅1200
ガス圧 700〜
1130mm
80kg
(静止時)
47,990円

出典:各商品ページ(確認日 2026-08-06)PABLO-3SPABLO-3Dフォリット

モーター1つと2つの差は、上下の動く幅にそのまま出ています。 シングルの680〜1080mmに対し、ダブルは610〜1270mm。下に7cm、上に19cm広がって、価格は約2.1万円上がります。耐荷重も80kgから100kgに上がりました。3製品とも保証は1年間、お客様組立品です。

昇降する部分は「壊れる部品」として見ておく

昇降デスクには可動部があります。ここは固定式の机には無い、寿命のある部分です。業界の資料には、その前提での数字が並んでいました。

表は横に長いため、横にスワイプ(PCは横スクロール)してご覧ください。

項目 中身
JISの
耐久試験
45kgを載せて
2,500回昇降
(執務用の場合)
業界の保証
の目安
昇降機構の故障
2年
標準使用期間 可動部のある机
8年
補修部品の
供給期間
製造中止後
5年以上

まず耐久試験です。JIS S 1031:2016(オフィス家具-机・テーブル)には高さ調節機構の耐久性試験が定められていて、天板に45kgを載せた状態で、執務用は2,500サイクル、それ以外は1,250サイクルの昇降を繰り返します。判定は「使用上支障のある破損及び変形がない」こと。穴にボルトやピンを差して高さを固定するタイプは対象外です。

2,500回という数は、日常の使い方に置き換えると大きくありません。 1日に3回上げ下げして週5日使うと、年750回。3年ほどで2,500回に届く計算です。ただしこれは合格ラインであって寿命の保証ではありません。試験で確かめられているのがそこまで、というだけです。

次に保証です。日本オフィス家具協会(JOIFA)の製品安全基準のガイドラインには、保証期間の設定例が3つの種別で載っています。塗装やレザーの摩耗などの外観が1年、引出しや錠前、昇降機構などの機構部・可動部が2年、強度や構造体に関わる破損が3年。 つまり昇降機構は、構造体より1年短い枠に置かれています。

同じ資料には、机・テーブルの構造要件として「可動部 手、指が挟まれにくい構造とし、操作は確実に行えること」とも書かれていました。衝突検知の有無が商品ページに書いてあるかどうかは、確認しておく価値があります。

そしてJOIFAの標準使用期間では、机が10年なのに対し、可動部のある机は8年です。昇降デスクは後者にあたります。この期間は保証でも税法上の耐用年数でもなく、「その期間までは重大事故の恐れはない」という目安として示されているものです。

立って使うことについて、国が書いていること

昇降デスクを立って使うことの是非については、健康の話になるため慎重に書きます。ここでは、国の文書に書かれている内容だけを紹介します。

先ほどの情報機器作業のガイドラインは、作業姿勢について「座位のほか、時折立位を交えて作業することが望ましく」と書いています。ずっと立つのではなく、座るのを基本として、ときどき立つ姿勢を混ぜる形です。

もう一つ、厚生労働省の健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023には、成人・高齢者への推奨事項として「座りっぱなしの時間が長くなりすぎないように注意する」という項目があります。この文書では、座位行動を「座位や臥位の状態で行われる、エネルギー消費が1.5メッツ以下の全ての覚醒中の行動」と定義し、デスクワークをその例に挙げています。

確認できなかったこと: 昇降デスクを使うことで具体的な健康上の効果が得られるかどうかについて、公的機関が製品として評価した資料は見つけられませんでした。

体調や持病によって、長く立つことが適さない場合があります。腰や脚に不安がある方は、医療機関にご相談ください。

買う前に確認しておきたいこと

1. いちばん下がる高さ

この記事の本題です。商品名や仕様表の「高さ○○〜○○mm」の左側を見てください。身長×12分の5が自分の目安です。身長160cmなら667mmなので、下限650mmまでの製品を選ぶことになります。

2. 天板の耐荷重

上で見た3製品は80kg・100kgでした。モニター2台とパソコン、書類を載せる使い方なら足りますが、重い機材を載せる予定があるなら数字を確かめてください。 ガス圧式は「静止時」と条件が付いていることがあります。

3. 組立と設置

3製品ともお客様組立品でした。PABLO-3Dは本体重量33.24kgあります。組立設置サービスは有料で、PABLO-3Dが5,170円、フォリットが5,280円です。

4. 送料と法人限定の表示

送料無料の製品でも、沖縄・離島は別途かかります。フォリットは個人宅への配送に5,500円が追加されます。また商品名に「【法人様限定】」と付いた製品は個人では買えません。

5. 保証の期間と対象

確認した3製品はいずれも1年間保証でした。業界の目安(昇降機構2年・構造体3年)より短いので、昇降機構が保証の対象に入っているかどうかは購入前に確かめておくところです。

向いている人/慎重になったほうがよい人

向いているのは、いま使っている机が高すぎると感じている方です。国の指針が調整式に広い下限を認めているのは、まさにそのためです。下限630mm前後の製品なら、身長150cm台から合わせられます。

同じく向いているのは、座り続ける時間を自分で区切りたい方です。国の指針も「時折立位を交えて」という書き方をしています。

慎重になったほうがよいのは、下限だけを見ずに買おうとしている場合です。 4台に1台は72cm以上からしか下がりません。立つ用途がないのに昇降デスクを選ぶと、固定式の机より高い机を、高い値段で買うことになりかねません。

もう一つ慎重になりたいのは、長く使うつもりの場合です。 昇降機構はJISの耐久試験が2,500回、業界の保証の目安が2年、標準使用期間は固定式より2年短い8年です。可動部があるぶん、点検と買い替えの前提が変わります。

まとめ

昇降デスクについて、公開されている情報はこうなっています。

国の指針が望ましいとしているのは、床から60cm〜72cmの調整範囲です。上限の指定はありません。ところが電動昇降デスク341点を数えると、60cmまで下がる製品は0点で、最も低くて610mmでした。さらに24%は、いちばん下げても72cm以上です。

方式では電動が下限の中央値650mmで最も下がり、手動・ガス圧は720〜765mmでした。価格は10万円未満が5%で、大半はオフィス家具メーカーの法人向けです。

そして昇降部分は消耗する部品です。JISの耐久試験は45kgで2,500回、業界の保証の目安は2年、標準使用期間は8年。 固定式の机(10年)より2年短く設定されています。

商品ページの写真は立ち姿勢ですが、確かめるべき数字はその反対側にあります。

デスクの高さそのものの基準はデスクの高さは何cmが正しいかを調べた記事に、椅子の側の耐久基準はオフィスチェアは何年もつかを調べた記事に、具体的な椅子の価格と保証条件はオフィスコムの椅子について調べた記事にまとめています。

オフィスコム公式サイトで昇降デスクを見る ※ 公式サイトに移動します

この記事の出典

この記事は、厚生労働省のガイドラインが示す机の調整範囲を確認したうえで、通販に掲載されている電動昇降デスク341点の高さを全ページ取得して機械的に集計し、指針と実際の製品がどれだけ離れているかを数えたものです。耐久試験と保証の数値は、JISと業界団体の資料から確認しました。

すべて2026年8月6日に確認しました。