昼寝は何分まで?
「30分以内」は10年前の指針の言葉
そもそも、どんな商品か
国が昼寝について何分という数字を出しているかを、現行の睡眠ガイド2023と、その前の睡眠指針2014の両方で確認した記事です。
上手な昼寝のコツを紹介する記事ではありません。よく聞く「30分以内」がどの資料の言葉で、今も生きているのかという話です。
まず結論だけ
- 「30分以内の短い昼寝」は2014年の睡眠指針の言葉です。その指針は2024年2月に改訂されました
- 現行の睡眠ガイド2023に、昼間に働く人へ何分寝ましょうと書いた文はありません
- 数字が付くのは2箇所だけ。高齢者は30分以上の昼寝の習慣で死亡リスク1.27倍と、避ける側の数字です
- もう1つは夜勤者向けで0〜4時に始める20〜50分。60分にすると仕事の効率はかえって低下していました
「昼寝は30分以内がいい」とよく聞きます。
その数字の出どころは、厚生労働省の「健康づくりのための睡眠指針2014」でした。 第8条に「午後の早い時刻に30分以内の短い昼寝」と書かれています。
ただし、この指針は2024年2月に改訂されています。 後継の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」を最初から最後まで読みましたが、30分以内という線はどこにもありませんでした。
代わりに数字が出てくるのは2箇所だけです。高齢者の「30分以上の昼寝の習慣で死亡リスク1.27倍」と、夜勤者の「0〜4時に始める20〜50分の仮眠」。どちらも、昼間に働く人に向かって「何分寝ましょう」と言った文ではありません。
資料の記載は2026年8月23日に確認しています。
結論:現行のガイドに、昼寝の推奨時間はありません
先に答えを書きます。
睡眠ガイド2023は、推奨事項を成人版・こども版・高齢者版の3つに分けています。このうち成人版は4ページありますが、その中に「昼寝」も「仮眠」も一度も出てきません。 当サイトが本文を検索した結果は0件でした。
つまり「昼間に働く成人が、何分昼寝をすればよいか」を、現行のガイドは書いていません。
「書いていない」ことには意味があります。2014年の指針には書いてあったからです。
表は横にスクロールできます
| 資料 | 昼寝についての記述 |
|---|---|
| 睡眠指針2014 (平成26年3月) |
第8条に「午後の早い時刻に30分以内の短い昼寝」 |
| 睡眠ガイド2023 (令和6年2月) |
成人版に記述なし。高齢者版と 交替制勤務の章にだけ数字がある |
出典:厚生労働省 健康づくりのための睡眠指針2014/健康づくりのための睡眠ガイド2023(確認日 2026-08-23)
「30分以内」は、どういう文脈で書かれていたのか
2014年の指針の側を見ておきます。この一文は、単独で書かれていたわけではありませんでした。
第8条の見出しは「勤労世代の疲労回復・能率アップに、毎日十分な睡眠を」です。その中の4つめの項目として、こうあります。
毎日十分な睡眠をとることが基本ですが、仕事や生活上の都合で、夜間に必要な睡眠時間を確保できなかった場合、午後の眠気による仕事の問題を改善するのに昼寝が役に立ちます。午後の早い時刻に30分以内の短い昼寝をすることが、眠気による作業能率の改善に効果的です。
前提が付いています。 「夜間に必要な睡眠時間を確保できなかった場合」です。夜きちんと眠れている人に昼寝を勧めた文ではありません。
なぜ30分なのかも、解説編に書かれていました。
ただし、必要以上に長く寝すぎると目覚めの悪さ(睡眠慣性)が生じるため、30分以内の仮眠が望ましいことが示されている
睡眠慣性という言葉が出てきます。眠りから覚めた直後の、頭がぼんやりして働かない状態のことです。この語は、現行のガイド2023にも出てきます。 そして、そこには別の数字が付いていました。
現行ガイドで、昼寝に数字が付く2箇所
睡眠ガイド2023の全51ページで「昼寝」「仮眠」が出てくるのは、次の3か所です。数字が付いているのは、そのうち2つです。
表は横にスクロールできます
| 章 | 対象 | 数字 |
|---|---|---|
| 高齢者版 | 高齢者 | 30分以上の昼寝の習慣で 死亡リスク1.27倍 |
| 就業形態 (交替制勤務) |
夜勤のある人 | 0〜4時に始める 20〜50分の仮眠 |
| こども版 | 4〜5歳以降 | 数字なし (必要性が低下する) |
並べてみると、性格がまるで違います。 高齢者版の数字は「これ以上寝ると悪い」という上限側の数字で、交替制勤務の数字は「この幅で寝ると仕事の効率が上がる」という効果側の数字です。
そして、昼間に働く成人はどちらにも入っていません。
夜勤の仮眠は20〜50分。60分にすると逆に下がります
いちばん具体的な数字が出ているのは、交替制勤務の章です。
0〜4時に開始する20〜50分間の仮眠は、眠気や仕事効率、疲労を改善させることが報告されています。しかし、仮眠時間を60分間と長めに設定した研究では、仮眠をとるとかえって仕事の効率が低下したと報告されています。
50分と60分の差は10分です。 その10分をまたぐと、改善する側から低下する側に変わったことになります。理由も書かれています。
これは、仮眠が長すぎると眠りが深まり、覚醒後の強いぼんやり感(睡眠慣性)が生じやすいためと考えられます。
2014年の指針が「30分以内」の理由に挙げたのと同じ、睡眠慣性です。 説明の仕組みは変わらず、数字だけが別のものになっています。
なお、交替制勤務の定義も書かれていました。 ここは誤解されやすいところです。
交替制勤務とは、始業時刻と終業時刻の組み合わせ(勤務時間帯)が固定されず、日ごとあるいは一定の期間ごとに勤務時間帯が変化する勤務形態を指します。勤務時間帯が夜から朝までの1パターンのみの場合は交替制勤務には含まれません。
夜勤専従の人は、この章の対象ではないということになります。ガイドによると、交替制勤務者は日本の労働者の10〜20%弱を占めるとされています。
コーヒーを飲んでから寝る方法が、資料に載っています
睡眠慣性への対策として、ガイドはこう書いていました。
この対策として、コーヒーなどでカフェインを摂取してから仮眠を開始すると、カフェインの覚醒効果により仮眠後の覚醒が容易になるとともに、睡眠慣性も生じにくくなるとの報告があります。
飲んでから寝る、という順番です。 カフェインが効き始めるまでに時間がかかることを利用した方法で、国の資料に報告として載っています。
夜勤中の仮眠が、そのあとの睡眠に響くかどうかも書かれていました。
夜勤中の仮眠が夜勤後の睡眠に及ぼす影響については、多くの研究において影響はほとんどないとされています。
仮眠のタイミングは、夜勤中だけではありません。
また、夜勤前に仮眠をとることが、夜勤中の眠気や仕事効率の低下に有効であるという報告や、夜勤後の仮眠が睡眠不足を補い、非番日の覚醒度や仕事効率を上げる可能性が示されています。
前・最中・後の3つとも挙がっています。 そのうえで、職場側への注文も書かれていました。
夜勤中に適切に仮眠がとれるよう、休養時間の確保や静かで快適に休養できる場所の整備についても、検討することが望まれます。
高齢者の昼寝は、避ける側に書かれています
高齢者版の推奨事項は3つあり、そのうちの1つが昼寝です。
長い昼寝は夜間の良眠を妨げるため、日中の長時間の昼寝は避け、活動的に過ごす。
数字はこうでした。
30分以上の昼寝を習慣としている人は、昼寝習慣がない人と比べ、将来の死亡リスクが1.27倍に増加することが報告されています。また、長い昼寝、頻回の昼寝は、夜間の睡眠の質の低下と関連し、認知機能の低下リスクも増加させることが報告されています。
回数も挙がっています。 1回の長さだけでなく、頻回であることも関連するとされています。
対策として書かれているのは、方法の話でした。
日中の長時間の昼寝は避けるようにしましょう。目覚ましをかける、同居者に起こしてもらうなどの工夫が有効です。
「起こしてもらう」まで書かれています。自分では起きられないことが前提にある書き方です。
なぜ高齢者で昼寝が増えるのかも説明されていました。
高齢世代では、加齢に伴い生理的に必要な睡眠時間が減少するとともに、睡眠・覚醒リズムを司る体内時計の加齢性変化の影響から昼夜のメリハリが低下します。昼夜のメリハリが低下すると、日中の活動量の減少及び昼寝時間の増加をもたらします。
昼寝が増えるのは結果のほう、という順番になっています。だから対策として挙がっているのが、昼寝を我慢することではなく、日中に光を浴びる・運動する・人と関わるという昼側の話になっています。
こどもは、4〜5歳以降で必要性が下がります
こども版には、質問と回答の形で載っていました。
Q. こどもに昼寝は必要ですか? A. 4〜5歳以降は昼寝の必要性が低下し、昼寝をすることによりむしろ、夜の寝つきの悪さ、睡眠不足、朝の目覚めの悪さなどが悪化する可能性が報告されています。このため夜の寝つきが悪い幼児は、昼寝をしない選択肢が望ましい可能性があります。
「昼寝をしない選択肢」という言い方です。断定はしていませんが、4〜5歳を境に扱いが変わると読めます。
本文の側にも、同じことが書かれています。
たとえば乳幼児期には昼寝をしますが、小学校に上がる頃には昼寝の習慣は減ってきます。
昼寝をする場所の話:オフィスの個室ブースは対象外です
最後に、場所の話を1つだけ足します。オフィスに置く個室ブースで昼寝をしようと考えている場合は、注意点があります。
消防庁の通知は、可動式ブースについて、一定の条件を満たせば消防用設備等の設置が不要になるとしています。その条件の1つがこれです。
表は横にスクロールできます
| 免除の条件(抜粋) | 内容 |
|---|---|
| 床面積 | 6㎡以下 |
| 天井と壁 | 不燃材料で仕上げ |
| 用途 | 火気の使用・宿泊・仮眠を目的としないこと |
「仮眠を目的としないこと」が明記されています。仮眠室として使うつもりなら、この免除の枠から外れることになります。
まとめ
- ⭐「昼寝は30分以内」は2014年の睡眠指針の言葉です。2024年2月に改訂され、現行の睡眠ガイド2023には載っていません
- ⭐現行ガイドの成人版4ページに、「昼寝」「仮眠」の語は1度も出てきません(当サイト検索で0件)
- 2014年の「30分以内」には「夜間に必要な睡眠時間を確保できなかった場合」という前提が付いていました
- 現行ガイドで数字が付くのは2箇所だけです
- ⭐高齢者は30分以上の昼寝の習慣で将来の死亡リスク1.27倍。避ける側の数字です
- ⭐夜勤者は0〜4時に始める20〜50分で眠気・仕事効率・疲労が改善。60分にすると効率はかえって低下していました
- 理由はどちらも睡眠慣性(起きた直後のぼんやり感)です。説明の仕組みは10年間変わっていません
- カフェインを摂ってから仮眠を始めると、睡眠慣性が生じにくいとの報告が紹介されています
- こどもは4〜5歳以降で昼寝の必要性が低下し、寝つきが悪い幼児はしない選択肢が望ましい可能性があるとされています
夜の側の目安は、睡眠時間は何時間?国の目安は6時間以上にまとめています。
この記事の出典
この記事は、厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」(令和6年2月)と、その前身である「健康づくりのための睡眠指針2014」(平成26年3月)の全文を確認し、昼寝・仮眠についての記述を突き合わせたものです。確認日は2026年8月23日です。
この記事は資料の内容を紹介したもので、診断や治療の助言ではありません。 「1.27倍」などの数字は、資料が引用している報告の結果で、当サイトが計算したものではありません。成人版に「昼寝」「仮眠」の語が0件であることは、当サイトが本文を検索して数えた結果です。 日中の強い眠気が続く場合は、睡眠障害が隠れていることがありますので、医療機関にご相談ください。
- 厚生労働省 健康づくりのための睡眠ガイド2023(令和6年2月) — 成人版・こども版・高齢者版の推奨事項/高齢者の30分以上の昼寝と死亡リスク1.27倍/長い昼寝・頻回の昼寝と夜間の睡眠の質・認知機能/交替制勤務の定義と労働者に占める割合/0〜4時に開始する20〜50分の仮眠/60分の仮眠と仕事効率/睡眠慣性とカフェイン/夜勤前・夜勤後の仮眠/こどもの昼寝は4〜5歳以降に必要性が低下/睡眠指針2014からの改訂の主旨
- 厚生労働省 健康づくりのための睡眠指針2014(平成26年3月) — 第8条「勤労世代の疲労回復・能率アップに、毎日十分な睡眠を」/午後の早い時刻に30分以内の短い昼寝/解説編8-④の睡眠慣性
- 消防予第211号 可動式ブースに係る消防用設備等の取扱いについて(令和5年3月30日・消防庁予防課長) — 免除の条件のうち「火気の使用・宿泊・仮眠を目的としないこと」
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