モニターアームは要る?机の奥行き600mmでは足りませんでした
そもそも、どんな商品か
机の端を挟んで固定し、モニターを宙に浮かせて支える金具です。画面の高さ・前後・角度を動かせます。
よく取り違えられるのが「モニター台」です。台は画面の下に敷いて高さを上げるもの。アームは台座そのものを机から無くすもので、別の商品です。この記事はアームの話です。
まず結論だけ
- JISの最適視距離は600mm。好まれる範囲は450〜750mmです
- 平机1,288点の奥行きは700mmが31.6%・600mmが26.9%
- 机の奥行きは、そのまま視距離になりません。モニターの脚が手前に食い込みます
- 規格は「本や書類を下に差し込まなくて済むのが望ましい」と書いています
モニターアームは、画面を高くする道具だと思われがちです。
規格を読むと、効いてくるのは高さより奥行きでした。
JISは「座位でのオフィス作業での最適視距離は600mmである」と書いています。 一方で、日本で売られている平机の奥行きでいちばん多いのは700mm、次が600mmです。
奥行き600mmの机で、600mmの視距離は取れるのでしょうか。
この記事では、先に自分の机の奥行きを測って、アームが要るかどうかを決める順番で書きました。規格の原文と、平机1,288点の奥行きの分布も出しています。
制度・データは2026年8月8日時点で確認しています。
結論:600mmの机では、600mmの視距離は取れません
先に答えを書きます。
取れません。理由は、机の奥行きがそのまま視距離にならないからです。
視距離は「目から画面まで」の距離です。ところが実際には、机の奥行きの全部を使えません。
- 画面は机のいちばん奥には置けません。モニターの脚が手前に張り出します
- 目は机の手前の端にはありません。体があるので、少し手前です
この2つで、机の奥行きより視距離のほうが短くなります。
モニターアームが解くのは、この差です。 脚がなくなるぶん画面を奥へ寄せられます。アームによっては、天板の外側へ押し出せます。

平机の3台に1台は、奥行き600mm以下です
オフィスコムの平机を全点集計しました。平机とは、いちばん標準的な事務机のことです。
数えたのは2026年8月8日です。数え方はこうなりました。
- 掲載されていた平机=1,581点(約1,600点)
- 商品名から奥行きが読めた机=1,288点(81.5%)
- 集計の対象=この1,288点
表は横にスクロールできます
| 奥行き | 点数 | 割合 |
|---|---|---|
| 700mm | 407 | 31.6% |
| 600mm | 347 | 26.9% |
| 800mm | 152 | 11.8% |
| 750mm | 63 | 4.9% |
| 500mm | 61 | 4.7% |
| 650mm | 57 | 4.4% |
出典:オフィスコム 平机の商品一覧を集計(確認日 2026-08-08)
いちばん多い2つの奥行きで、全体の58.5%を占めます。 中央値も700mmでした。中央値とは、小さい順に並べたときにちょうどまん中に来る値のことです。
奥行き600mm以下は465点あります。割合は36.1%です。3台に1台以上が、この帯に入ります。
自分の机が600mm以下なら、この36.1%の側です。この記事の話がそのまま当てはまります。

JISの視距離は、400mmが下限で600mmが目標です
視距離は、JIS Z 8515に数字で書かれています。規格の正式な名前は次のとおりです。
- 人間工学-視覚表示装置を用いるオフィス作業-ワークステーションのレイアウト及び姿勢の要求事項
表は横にスクロールできます
| 何の数字 | 値 |
|---|---|
| 設計視距離 | 400mm以上 |
| 座位での 最適視距離 |
600mm |
| 好まれる範囲 | 450〜750mm |
原文はこうです。
「設計視距離、例えば、ディスプレイ製造業者が定める数値は400mm以上に設定されている」 「座位でのオフィス作業での最適視距離は600mmである」 「しかし、個々のユーザーは450mmから750mm(y=±150mm)の設定を好む傾向にある」
出典:JIS Z 8515:2002 附属書A 2.12 視距離(x)とその変化(y)(確認日 2026-08-08)
400mmは下限であって、目標ではありません。 ここを取り違えると「40cm離れているから大丈夫」で止まってしまいます。
厚生労働省のガイドラインも「視距離はおおむね40cm以上」としています。これも下限の書き方です。詳しくはモニターの高さと距離を調べた記事にまとめました。




同じ規格には、画面の見える角度の決まりもあります。
「観視角(最適値は0°)は、ディスプレイ上の全領域において40°を超えないことが望ましい」
画面のどの部分を見るときも、正面から40°以内に収まっていてほしい、という意味です。画面が大きいほど、離さないとこの角度に収まりません。
机の奥行きは、そのまま視距離になりません
ここが本題です。
奥行き600mmの机を上から見たとき、視距離を短くする要素が2つあります。
表は横にスクロールできます
| 何が食うか | 内容 |
|---|---|
| モニターの脚 | 台座の奥行きぶん、 画面が手前に出る |
| 体の位置 | 目は机の手前端より さらに手前 |
モニターは、台座の中心より少し前に画面が立っています。 台座を机のいちばん奥に押し付けても、画面はそこから手前に来ます。
人は、机の手前の端にぴったり体を付けて座っていません。JISは、机と体の間についてもこう書いています。
「ユーザーと水平方向の最も近い障害物までの距離は、下肢を垂直に降ろした状態から30°(通常)前に出しても、障害物に当たらずに動かすことができるように設定するのがよい」
足を前に出せる余裕を取ることが前提です。 体を机に密着させる想定ではありません。この足元側の話はデスク下のクリアランスを調べた記事にまとめています。
この2つを引いた残りが、実際の視距離です。 だから奥行き600mmの机では、最適の600mmには届きません。




モニターアームは、この両方に効きます。
- 台座がなくなるので、画面を天板の奥ぎりぎりまで下げられます
- アームの伸ばし方によっては、天板より外側へ画面を出せます
奥行き700mmの机なら、脚付きのままでも好まれる範囲に入る見込みがあります。 好まれる範囲は450〜750mmです。600mm以下の机ほど、アームの効き目が大きくなります。
規格は「本を挟んで高さを合わせる」を想定していません
もう一つ、読んでいて目に留まった一文があります。
「表示装置は、ユーザーが本や書類などを下に差し込んで調節しなくともすむことが望ましい」
本や雑誌を積んで画面の高さを合わせる方法を、規格は避けたいものとして書いています。
何で調節するのかも、同じ項に続きます。
「調節は表示装置に組み込まれた機構又は家具、若しくはディスプレイ自体の一部を構成する専用装置によって行われるのが望ましい」
「家具」または「専用装置」です。モニター台もモニターアームも、ここに当てはまります。否定されているのは本や書類で代用することであって、台そのものではありません。

規格が求めているのは、角度を変えられる・傾けられる・回転できることです。「高さ調節も好ましい」ともされています。

買う前に確認しておきたいこと
1. まず自分の机の奥行きを測る
これが最初です。 600mm以下ならアームの効果が大きく、700mm以上なら急がなくてよい可能性があります。数字が分かってから商品を見てください。
2. 天板の厚みと、クランプが付く場所
モニターアームの多くは、天板を挟むクランプ式か、天板に穴を開けるグロメット式です。挟める天板の厚みには上限があります。 机の奥に幕板や配線トレーがあると、挟める場所がありません。
実際の商品がどんな厚さに対応しているかは、オフィスコムのモニターアーム246点を調べた記事にまとめました。
3. モニター側の取り付け穴(VESA)
アームはモニター背面のネジ穴に付けます。この穴の規格がVESAです。正式な名前はFDMIで、Flat Display Mounting Interfaceの略です。
穴がないモニターには付きません。 モニターの仕様表で確認してください。
4. 画面の大きさと重さ
大きい画面ほど、離す必要があります。 前に書いた観視角40°の話です。重い画面は、アームの耐荷重を超えると自然に下がってきます。
耐荷重とは、そのアームが支えられる重さの上限のことです。インチ数と重量の両方を、アームの対応範囲と突き合わせてください。




向いている人/慎重になったほうがよい人
この話が効くのは、机の奥行きが600mm以下の方です。 集計では36.1%がここに入ります。画面を離したくても物理的に離せないので、アームで台座を消すのがいちばん素直な解決になります。
画面を2枚使っている方にも効きます。台座2つぶんの面積が消えるので、机の使える範囲が変わります。



慎重になったほうがよいのは、机の奥行きが700mm以上ある場合です。 脚付きのままでも450〜750mmの範囲に収まる見込みがあります。
先に机の奥行きを測って、今の視距離を測ってみてください。 足りているならアームは要りません。
もう一つは、天板が薄い・ガラス・引き出しが奥まで来ている机の場合です。 クランプが付かないことがあります。買ってから気づくと返品の手間になります。

まとめ
モニターアームについて、規格と実際の商品はこうなっています。
JIS Z 8515の視距離は3つの数字です。
- 設計視距離=400mm以上。下限であって目標ではありません
- 座位での最適視距離=600mm
- 好まれる範囲=450〜750mm
オフィスコムの平机1,288点の奥行きは、こう分かれました。
- 700mm=31.6%
- 600mm=26.9%
- 上の2つで58.5%
- 600mm以下=36.1%
机の奥行きは、そのまま視距離になりません。 モニターの台座が画面を手前に押し出し、目は机の手前端よりさらに手前にあるからです。だから奥行き600mmの机では、最適の600mmには届きません。
規格は「本や書類を下に差し込んで調節しなくともすむことが望ましい」と明記しています。 代わりに「家具、若しくは専用装置」での調節を望ましいとしています。モニターアームはここに当てはまります。
買う前にやることは1つです。自分の机の奥行きを測ってください。 それでアームが要るかどうかが、ほぼ決まります。

- 机の奥行きは視距離ではありません。台座のぶん画面が手前に来るので、600mmの机では最適の600mmに届きません
- 平机の36.1%は奥行き600mm以下でした。ここに入る机ほど、台座を消すアームの効き目が大きくなります
- 買う前に測るのは机の奥行きです。あわせて天板の厚みと、奥の端に幕板や配線トレーがないかを見てください
机まわりの数字は奥行きだけではありません。高さは60〜72cm、脚のクリアランスは別に必要です。それぞれデスクの高さを調べた記事とデスク下のクリアランスを調べた記事にまとめました。
近い話は、別の記事に分けています。
- 画面の高さそのもの → モニターの高さと距離の記事
- キーボードの高さ → キーボードの高さを調べた記事
- 昇降デスク → 下がる高さで選ぶ記事
この記事の出典
この記事は、JIS Z 8515の本文で視距離と観視角の規定を読みました。規格の名前は「ワークステーションのレイアウト及び姿勢の要求事項」です。そのうえで、満たせる机がどれだけあるかを、オフィスコムの平机全1,581点の商品名から奥行きを取り出して数えました。
すべて2026年8月8日に確認しました。
- JIS Z 8515:2002 人間工学-視覚表示装置を用いるオフィス作業-ワークステーションのレイアウト及び姿勢の要求事項(附属書A 2.12 視距離=設計視距離400mm以上・座位の最適600mm・好まれる範囲450〜750mm/2.13 障害物までの距離=下肢を30°前に出せる/5.4.3 観視角40°・本や書類を差し込まなくて済むのが望ましい・家具又は専用装置で調節)
- オフィスコム 平机の商品一覧(奥行きの集計元・2026年8月8日時点の1,581点中1,288点)
- 厚生労働省 情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン(視距離おおむね40cm以上)
- VESA Standards(FDMI=Flat Display Mounting Interface)
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