オフィスチェアのヘッドレストは必要?国の5つの要件に0回でした
そもそも、どんな商品か
オフィスチェアのヘッドレスト(頭を預ける部分)とランバーサポート(腰当て。背もたれの下のほうを前に張り出させて腰を支える部分)が、本当に必要な装備なのかを、国の基準と実際に売られている7,389点の両方から確かめた記事です。
ヘッドレスト付きのおすすめ機種を選ぶ記事ではありません。また「体に悪い」という話でもありません。国が要件として挙げているかどうかと、付くといくら高くなるかを数えたものです。
まず結論だけ
- 国が椅子に求めている要件は5つ。ヘッドレストもランバーサポートも0回出てきません
- いっぽう実売は7,389点中1,455点(19.7%)にヘッドレストが付いています
- 同じ椅子で比べるとヘッドレストで6,000円、ランバーサポートで10,500円高くなります
- ⭐国が腰のために名指ししているのは腰当てではなく「足台」でした
高い椅子と安い椅子を並べると、見た目の違いはたいてい2つです。頭の上に伸びている部分と、腰のあたりの出っ張りです。前がヘッドレスト、後ろがランバーサポートと呼ばれます。
この2つが本当に必要なのかを、国の基準と実売の両方から確かめました。
国が椅子に求めている要件は5つで、そこにヘッドレストもランバーサポートも出てきません。 いっぽう実売では、ヘッドレストが付く椅子は5点に1点でした。同じ椅子で比べると、付くぶんの値段は6,000円です。
制度の確認は2026年8月27日に行いました。掲載点数の集計は2026年8月20日取得分です。
結論:国の要件にはどちらも無く、要るかは座り方で決まります
厚生労働省の情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドラインは、椅子の要件を5つ挙げています。パソコンを使う仕事の環境について、国が示している文書です。その5つのどこにも、ヘッドレストもランバーサポートも出てきません。
ガイドライン本文と解説をあわせた20ページのPDF全体でも、出てくる回数は0回でした。
表は横にスクロールできます
| 語 | 出てくる回数 |
|---|---|
| 背もたれ | 2回 |
| 肘掛け | 1回 |
| 足台 | 3回 |
| ヘッドレスト | 0回 |
| ランバーサポート (腰当て) |
0回 |
国が名前を出しているのは、背もたれ・肘掛け・足台の3つだけです。
これは「ヘッドレストは無駄だ」という意味ではありません。国が要件として決めていない、ということです。 決められていないので、要るかどうかは自分の座り方で決めることになります。

国が椅子に求めている5つの要件=全部「調整できるか」です
ガイドラインの「ト 椅子」の全文を、そのまま並べます。
(イ)安定しており、かつ、容易に移動できること。 (ロ)床からの座面の高さは、作業者の体形に合わせて、適切な状態に調整できること。 (ハ)複数の作業者が交替で同一の椅子を使用する場合には、高さの調整が容易であり、調整中に座面が落下しない構造であること。 (ニ)適当な背もたれを有していること。また、背もたれは、傾きを調整できることが望ましい。 (ホ)必要に応じて適当な長さの肘掛けを有していること。
5つのうち3つは、高さ・移動・落ちないことの話です。 残りが背もたれと肘掛けです。肘掛けには「必要に応じて」という条件まで付いています。
商品ページの見出しになっている装備は、ここに1つも出てきません。ヘッドレスト、ランバーサポート、リクライニングの角度、素材のことです。国が見ているのは、体に合わせて調整できるかどうかです。
座面の高さだけは、解説に数字があります。床から37〜43cmです。
この数字には、座って沈んだあとの高さだという但し書きが付いています。詳しい読み方はオフィスチェアの座面高は何cm?にまとめました。

実売では、ヘッドレストは5点に1点です
いっぽうの市場です。オフィス家具通販のオフィスコムに載っているオフィスチェアは7,389点あります。その商品名に、どの装備が書かれているかを数えました。
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| 商品名に書かれている装備 | 点数 | 割合 |
|---|---|---|
| 肘あり(可動肘・固定肘など) | 3,303点 | 44.7% |
| ランバーサポート | 1,838点 | 24.9% |
| 肘なしと明記 | 1,474点 | 19.9% |
| ヘッドレスト | 1,455点 | 19.7% |
| フットレスト・オットマン | 33点 | 0.4% |
ヘッドレストが付いているのは5点に1点です。 ランバーサポートも4点に1点で、どちらも多数派ではありません。
ランバーサポートの1,838点には、「なし」と書いた108点が含まれます。差し引くと1,730点で、23.4%です。ヘッドレストにも「なし・別売」が3点あります。

ここで、国の表と並べます。
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| 国のガイドライン | 実売7,389点 | |
|---|---|---|
| 背もたれ | 要件(傾き調整は望ましい) | ほぼ全点 |
| 肘掛け | 必要に応じて | 44.7%が「あり」 |
| 足台 | 名指しで「備えること」 | 0.4%(33点) |
| ヘッドレスト | 0回 | 19.7% |
| ランバーサポート | 0回 | 24.9% |
足台の33点は、椅子に足置きが一体になっているものです。独立した足台のほうは、あとの見出しで書きます。
国が名前を出した装備ほど売られておらず、名前を出していない装備ほど売られています。ここが、この記事でいちばん伝えたいところです。



同じ椅子なら、ヘッドレストは6,000円、ランバーサポートは10,500円
付くと値段はどれだけ変わるのでしょうか。単純に比べると、差は5万7千円になります。ヘッドレスト付きの中央値が159,390円で、なしが102,190円だからです。
中央値とは、小さい順に並べたとき、ちょうどまん中に来る値のことです。
この5万7千円は、正しい比べ方ではありません。 ヘッドレストは高級機種に付きやすいので、機種の差を見ているだけになります。
比べたのは、商品名がヘッドレストの表記以外は同じ商品どうしです。同じシリーズ・同じ色・同じ肘のタイプで、ヘッドレストの有無だけが違う組み合わせです。
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| 装備 | 比べられた組み合わせ | 価格差の中央値 |
|---|---|---|
| ヘッドレスト | 13組(6シリーズ) | +6,000円 |
| ランバーサポート | 210組(1シリーズ) | +10,500円 |
13組すべてで、ヘッドレストが付くほうが高くなりました。安くなった組み合わせは0組です。差の幅は1,750円から30,400円でした。
実例を挙げます。
表は横にスクロールできます
| 商品 | なし | あり | 差 |
|---|---|---|---|
| オフィスコム YS-1 | 26,490円 | 28,990円 | +2,500円 |
| RFヤマカワ T30チェア | 47,100円 | 52,600円 | +5,500円 |
| プラス mari | 29,690円 | 37,690円 | +8,000円 |
| 関家具 AiDen A03-E | 58,900円 | 64,900円 | +6,000円 |
| イナバ Xair | 196,900円 | 227,300円 | +30,400円 |
ランバーサポートのほうは、イトーキのアクト2という1つのシリーズだけでした。その中に210通りの組み合わせが並んでいます。たとえば116,600円のモデルに付くと、127,100円になります。
差は10,300〜11,000円の範囲にきれいに収まっていました。 1シリーズの中では一定だった、ということです。




YS-1についてはオフィスコムYS-1を実際に調べた記事にまとめています。
国が腰のために名指ししているのは「足台」でした
ここが、調べていていちばん意外だったところです。腰のためにお金を出すなら、まずランバーサポートだと思っていました。ガイドラインの解説で腰に効くと書かれているのは、腰当てではなく足台でした。
(イ)において、必要に応じ、足台を備えることとしたのは、足台は、足を疲れさせないだけでなく、背中や腰の疲れを防ぐ効果も有するためである。
「背中や腰の疲れを防ぐ効果」と、はっきり書かれています。ランバーサポートには、この種の説明が1文もありません。0回だからです。
理由は姿勢の順番にあります。ガイドラインは座り方の基本をこう決めています。
椅子に深く腰をかけて背もたれに背を十分にあて、履き物の足裏全体が床に接した姿勢を基本とすること。
足の裏が床に着いていることが先です。 足が浮くと、太ももの裏が座面の前縁に押しつけられます。すると骨盤が後ろに傾きます。
骨盤が後ろに傾いた状態でいくら腰を後ろから押しても、姿勢は戻りません。 だから国は、腰を押す装備ではなく足を支える台を挙げているのだと読めます。
解説はもう1つ、椅子で高さを合わせきれない場合の対処も書いています。
椅子の調整範囲で調整できない場合については、フットレストの利用等必要に応じて対応することが望ましい。
ガイドラインで「フットレスト」という言葉が使われているのは、椅子の装備としてではなく、足を乗せる台としてです。
実売では、この足台がほとんど売られていません。
椅子7,389点のうち、足置きが一体になっているものは33点でした。独立した足台は、同じ通販で「足置き台」と検索して3点です。そのうち2点はゲーミングチェア用のオットマンでした。
オットマンとは、足を伸ばして乗せる台のことです。机の下に置く足台は1点、6,200円のものだけでした。
分類そのものも確かめました。「椅子・チェア>チェア用品>オットマン・フットレスト」というカテゴリーがあり、22点が入っています。
中身はソファ用のオットマンが中心です。たとえば49,500円や143,000円のものです。足元に置いて足の裏を乗せる台は、その中の1点です。
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| 数えたもの | 点数 |
|---|---|
| オフィスチェア(比較のため) | 7,389点 |
| 「オットマン・フットレスト」 カテゴリー |
22点 |
| 「足置き台」の検索結果 | 3点 |
| 机の下に置く足台 | 1点(6,200円) |
国が名指しで「備えること」と書いた装備が、椅子7,389点を売っている店で1点です。いっぽう国が1回も書いていないヘッドレストは1,455点あります。
検索結果は2026年8月27日時点です。「フットレスト」という語で検索すると113点出てきますが、その大半は「フットレスト付き」の椅子です。


肘掛けは「必要に応じて」=国は要否を決めていません
肘掛けは、5つの要件の中で条件つきで書かれている項目です。アームレストとも呼ばれます。
(ホ)必要に応じて適当な長さの肘掛けを有していること。
「必要に応じて」です。 付いているべきとも、要らないとも書かれていません。
解説には、腕まわりについてこういう記述があります。
打鍵の際に腕や手首を乗せる支持台がないと肩のこりや痛みは増加し
キーボードを打つときに腕を乗せる場所がないと、肩がこる。 これは肘掛けが役に立つ場面の説明として読めます。国が挙げているのは「支持台」で、肘掛けとは書き分けられています。
机やリストレストでもよい、ということです。
肘掛けの高さについては、JIS Z 8515に別の定義があります。規格上の肘掛けは、ずっと腕を預ける道具ではなく、作業が中断しているときと立ち座りの補助です。詳しくはオフィスチェアのひじ掛けは何cm?にまとめています。

「ランバーサポート」は、国が定義していない言葉です
もう1つの制度も確かめました。家庭用品品質表示法にもとづく雑貨工業品品質表示規程です。家庭用品品質表示法とは、日用品に材料や性能の表示を義務づけている法律のことです。
椅子を売るときに何を表示しなければならないかを決めた規程です。「二十三 椅子、腰掛け及び座椅子」がそれにあたります。表示が義務づけられているのは、次の7項目です。
表は横にスクロールできます
| 表示すべき事項 | 内容 |
|---|---|
| 寸法 | 外形寸法と座面の高さ(±10mm以内) |
| 構造部材 | 使っている材料の名称 |
| 表面加工 | 塗装などの種類 |
| 張り材 | 表面の材料 |
| クッション材 | 中身の名称 |
| 取扱い上の注意 | 直射日光を避ける等 |
| 表示者名 | 氏名・住所または電話番号 |
ここにも「ヘッドレスト」「ランバーサポート」「肘掛け」は1つも出てきません。 耐荷重もありません。耐荷重とは、その製品が支えられる体重の上限のことです。
ヘッドレストやランバーサポートの有無・形・効き方は、国が定義も表示方法も決めていない言葉です。各メーカーが自社の判断で名前を付けて売っています。
同じ「ランバーサポート」でも、中身は2通りあります。動かせる板が入っているものと、背もたれの形が少し前に出ているだけのものです。この2つが同じ名前で並びます。
座面の高さのほうは、この規程で測り方まで決められています。座面中央(座位基準点)の水平の高さです。国が数字を決めているのは、装備ではなく寸法のほうです。

必要かどうかは、背もたれを倒す時間があるかで決まります
国が決めていない以上、決め手は「自分がその姿勢を取るかどうか」になります。
ヘッドレストが効くのは、背もたれを倒したときだけです。 背もたれを起こして前傾でキーボードを打っている間、頭は背もたれより前にあります。ヘッドレストには届きません。
ガイドラインの基本姿勢は「深く腰をかけて背をあてる」です。頭を預ける姿勢は出てきません。
判断はこうなります。
ヘッドレストが要る人
- 仕事の合間に背もたれを倒して休憩する人(ここでだけ働く装備です)
- 動画視聴や読書など、上体を後ろに預ける時間が長い人
- 身長が高く、背もたれの上端が肩までしか来ない人(+6,000円で背の高さを買うことになります)
ヘッドレストが要らない人
- 前傾ぎみで作業していて、倒して休む習慣がない人
- 背もたれを倒す物理的なスペースが後ろにない人



ランバーサポートについては、もう1つ確認する点があります。位置が動くかどうかです。腰を支える位置は座高で変わります。
高さを変えられないランバーサポートは、合わなければ当たる場所がずれたままになります。10,500円を出すなら、上下に動くかどうかを商品ページで確かめてください。

買う前に確認しておきたいこと
順番に見る項目です。
- ❶ 座面の高さが自分に合う範囲まで下がるか — 国の要件の(ロ)です。装備より先にここです
- ❷ 足の裏が床に着くか — 着かないなら、まず足台です。オフィス家具の店では1点しか置いていないので、家具店以外でも探すことになります
- ❸ 背もたれの傾きが調整できるか — 要件の(ニ)で「望ましい」とされている項目です
- ❹ ヘッドレストを使う姿勢を取るか — 倒して休む時間があるかどうかで決まります
- ❺ ランバーサポートが上下に動くか — 動かないものは、合わなければ調整できません
- ❻ 肘掛けの高さが調整できるか — ひじ掛けの記事に、当たる高さの計算があります

まとめ
国が椅子に求めている要件は5つで、ヘッドレストもランバーサポートも0回です。 出てくるのは背もたれ・肘掛け・足台です。
実売では、ヘッドレストが付く椅子は5点に1点でした。ランバーサポートは4点に1点です。国が名指しした足台は、机の下に置くものが1点でした。
国が名前を出した装備がいちばん売られていません。
同じ椅子で比べると、ヘッドレストは6,000円、ランバーサポートは10,500円ぶん高くなります。
必要かどうかは、国が決めていないので自分の姿勢で決めることになります。背もたれを倒して休む時間があるならヘッドレスト、足が床に着いていないなら、まず足台です。

- 国の要件5つに、ヘッドレストもランバーサポートも0回。実売7,389点では、それぞれ1,455点(19.7%)と1,838点(24.9%)に付いています
- 同じ椅子で比べた差は、ヘッドレスト6,000円・ランバーサポート10,500円。両方で16,500円です
- だから先に座り方で決めます。倒して休むならヘッドレスト、足が浮くなら6,200円の足台が先です
この記事の出典
この記事は、厚生労働省のガイドライン本文と解説を全文取得し、語の出現回数を数えたものです。本文と解説をあわせると20ページのPDFです。あわせて通販に載っているオフィスチェア7,389点の商品名を機械的に集計しました。
価格差は、商品名が装備の表記以外は同じ商品どうしを突き合わせて求めました。表示義務の項目は、消費者庁の規程本文から確認しています。制度の確認は2026年8月27日、掲載点数と価格の集計は2026年8月20日取得分です。
- 厚生労働省 情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドラインと解説(椅子の5要件・座面高37〜43cm・足台は背中や腰の疲れを防ぐ)
- 消費者庁 雑貨工業品品質表示規程 二十三 椅子、腰掛け及び座椅子(表示すべき7項目)
- オフィスコム オフィスチェア一覧(7,389点を集計)
- オフィスコム オットマン・フットレスト(22点・2026年8月27日確認)
- JIS Z 8515:2002 人間工学-視覚表示装置を用いるオフィス作業-ワークステーションのレイアウト及び姿勢の要求事項(肘掛けの役割の定義)
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