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マットレスの寿命は何年?JISが決めているのは8万回です

そもそも、どんな商品か

マットレスが何年もつのか、そして商品に付いている「◯年保証」が何を保証しているのかを調べた記事です。

「◯年保証」は「◯年もつ」という意味ではありません。保証は不具合を直す約束で、使っているうちに沈んでくること(へたり)は、対象から外れていることがあります。

まず結論だけ

  • JIS S 1102が決めているのは80,000回加圧してへたり40mm以下。年数ではありません
  • ニトリの30年保証はスプリング部分だけ。クッション材のへたりは規約で対象外です
  • フランスベッドも「へたり・におい・軋み音は保証の対象外」と明記しています
  • 逆に「芯材の20%以上の凹み」を年数つきで保証している店もありました

保証の中身を比べた表を見る →

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マットレスを調べると、どこでも「寿命は5〜10年」と書いてあります。素材ごとに「低反発は3〜5年」「ポケットコイルは8〜12年」と、もっと細かい数字も出てきます。低反発=押すとゆっくり沈み、手を離すとゆっくり戻る性質のウレタン。ポケットコイル=ばねを1個ずつ袋に入れて並べた構造のことです。

その数字の出どころを探したのですが、規格にも、業界団体にも、法律にも見つかりませんでした。

代わりに見つかったのは、年数ではなく回数の基準でした。

制度・データは2026年8月9日時点で確認しています。

結論:規格が決めているのは「年数」ではなく「回数」です

先に答えを書きます。

ベッドの規格はJIS S 1102(住宅用普通ベッド)です。この規格には、マットレスの耐久性についての合格条件が書かれています。

「へたり量のd1、d2及びd3は、いずれも40 mm以下とする」 「80 000回の加圧試験後、次の異常があってはならない」

80,000回。これが規格の数字です。そしてこの80,000回が何年ぶんに当たるのかは、規格のどこにも書かれていません。

一方で、商品に付いてくる「◯年保証」のほうを調べると、いちばん困る症状であるへたりが、保証の対象から外れているケースが見つかりました。

「何年もつか」を先に決めている人は誰もいない、というのがこの記事の結論です。

JISのへたり試験は、こうやって測ります

規格の試験方法(10.1.1)を読むと、かなり具体的です。

項目 規格の内容
加える力 1,000Nまで加圧
速さ 160±10回/分
測る
タイミング
200回・
10,000回・
80,000回の時点
合格条件 へたり量
d1・d2・d3が
いずれも
40mm以下
加圧
する場所
幅1,200mm未満
=中央部
1,200mm以上
=幅の中心線上で
長さの1/3

出典:JIS S 1102:2017 表1 性能及び適用試験箇条/10.1.1 マットレス及びボトムの耐久性試験(確認日 2026-08-09)

1,000Nは、重さに直すとおよそ102kgです。それを1分間に160回80,000回繰り返します。

80,000回と聞くと、何年もかけて繰り返すように見えます。実際は、機械が1分間に160回のペースで押し続けます。

試験の中身 数値
加圧する回数 80,000回
1分間に押す回数 160回
かかる時間 500分=8時間20分

80,000回は、8時間20分で押し終わります。 一日の仕事が終わる前に、試験そのものは片づいてしまう長さです。「80,000回に耐えた」は、丸一日もかからない試験を通った、という意味になります。

へたり量は3回に分けて記録します。200回の時点でd1、10,000回でd2、80,000回でd3最初のうちにどれだけ沈むかと、最後まで沈み続けるかを別々に見ているわけです。

合格条件はほかにもあります。

  • 80,000回のあとに「表地のずれ、ほつれ、破れなど」「詰物の移動、落ち込み、外れなど」「ばねの折れ、外れなど」がないこと
  • 垂直荷重試験で、たわみの増加量がD1は45mm以下、D2は5mm以上
  • マットレス表地の引張強度が300N以上
この80,000回は、試験機で1か所を押し続けた回数です。人が寝返りを打つ回数や、使った年数に読み替えられるものではありません。規格もそのような換算を示していません。
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業界団体の基準にも、年数はありません

全日本ベッド工業会(BMAJ)は、1964年に結成された、経済産業省の直轄団体として位置づけられている業界団体です。このJIS S 1102を制定したのは、この工業会自身です。

「関連団体とも協調し、SG(安全)に対応し、工業会主体でJIS規格(住宅用普通ベッド)を制定し、そのときに応じた改訂を行い」

その工業会が独自に作っている認定基準は2つあります。

認定 何を見ているか
衛生
マットレス
ホルムアルデヒド
溶出量
75μg/g以内
抗菌防臭の
静菌活性値
2.2以上 など
フレーム
環境基準
ホルムアルデヒド
放散量
JIS S 1102の強度
(脚部441N・
サイドフレーム
3,000Nなど)

出典:全日本ベッド工業会 衛生マットレスフレーム環境基準(確認日 2026-08-09)

どちらにも「何年もつ」という年数はありませんでした。 衛生マットレスは衛生と環境の基準で、フレーム環境基準は強度の基準です。フレーム側でも耐久性は「マットレスの耐久性の8万回加圧で実用上支障のある欠点のないこと」と、やはり回数で書かれています。

「◯年保証」が何を保証しているかを調べました

では、実際に売られているマットレスの保証はどうなっているのか。公表されている保証規定を読みました。

販売元 保証
期間
へたりは
対象か
ニトリ スプリング
30年
それ以外
5年
対象外
フランス
ベッド
販売
2年
(一部
1年)
対象外
快眠
タイムズ
2〜5年
(商品
による)
対象
芯材の
20%以上
の凹み
エムール 169点中
3点に
「1年間の
安心保証」
記載なし

出典:ニトリ 品質保証30年フランスベッド販売 商品の保証・修理・交換について快眠タイムズエムールの商品ページ(確認日 2026-08-09)

ニトリの「品質保証30年」は、マットレス全体の保証ではありません。

「30年保証 スプリングマットレスのスプリングの故障や不具合に適用されます」 「5年保証 30年保証以外の部分の故障や不具合に適用されます」 「※表面材などの外観部分は保証適用外です」

そして保証に関する規約の除外事項に、こう書かれています。

「g. ソファやマットレス等のクッション材のへたり」

フランスベッド販売も同じです。

「※マットレスのへたり、におい、軋み音での交換返品は保証の対象外となり有償となります」

さらに「保証はフランスベッド、もしくは東京ベッドのフレームとマットレスをセットでお使いの場合のみ適用となります」という条件も付いています。他社のフレームに載せていると、保証そのものが効きません。

一方で、へたりを正面から保証している店もありました。

快眠タイムズ(株式会社篠原化学)のマットレスは、商品ページに保証の中身が書かれています。

「5年間保証(芯材の20%以上の著しい凹みに対しての保証です。側地やファスナーの汚れ、破損については対象外です)」(マットレス3.0)

エコラテエリートの三つ折り・一枚ものは3年間、ソファラテは2年間で、いずれも「芯材の20%以上の著しい凹み」という同じ判定基準です。マットレスの5点すべてに、年数と判定基準の両方が書かれていました。

エムールのマットレス・敷き布団は約170点(2026年8月9日に数えて169点)で、商品説明に保証が出てくるのは3点だけで、いずれも「1年間の安心保証」とだけ書かれ、へたり(=使ううちに厚みが減って、元に戻らなくなること)が対象かどうかは書かれていませんでした。

これは各社が公表している規定を読んだ結果で、実際の対応を試したものではありません。保証の適用は最終的に販売元の判断になります。また、エムールの169点は商品説明の本文を機械的に調べたもので、購入時に付く保証書の中身までは確認できていません。
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「寿命5〜10年」という数字はどこから来たか

ここは正直に書きます。

探した範囲では、公的機関・規格・業界団体のいずれにも、マットレスの寿命を年数で示した資料は見つかりませんでした。

年数を挙げているのは、家具店や寝具店の解説記事です。そこに出典は示されていません。 素材別の「低反発3〜5年」「ポケットコイル8〜12年」といった細かい数字も同じでした。

「間違っている」と言いたいのではありません。 使用感からくる経験則としては妥当かもしれません。ただ、確かめようがない数字であることは知っておいたほうがよいと思います。

「標準使用期間」という制度がある分野もあります。デスクまわりのオフィス家具は業界団体が年数を示していて、そちらは[オフィスチェアは何年もつかの記事](/posts/office-chair-durability/)にまとめました。寝具側には、同じような年数の制度が見つかりませんでした。

では、買い替えの目安は何で決めるか

年数の根拠がないなら、数字で決められるものを使うしかありません。公表されている数値の基準は、次の2つでした。

1. 芯材の20%以上の凹み

快眠タイムズが保証の判定に使っている基準です。厚さがわかっていれば自分で計算できます。

マットレスの厚さ 20%にあたる凹み
5cm 1cm
10cm 2cm
14cm 2.8cm
20cm 4cm
25cm 5cm

2. へたり量40mm(JIS)

規格の合格ラインです。ただし試験機で1,000Nを80,000回かけたあとの数字なので、家庭で測った凹みと直接比べられるものではありません。

家庭での測り方は、規格にも保証規定にも書かれていません。まっすぐな棒や糸をマットレスの上に渡し、いちばん沈んでいるところまでの距離を測るのが、いちばん近い測り方になります。人が乗っていない状態で測ってください。

どこを測るかは、規格が加圧する場所が参考になります。 幅1,200mm未満なら中央部、1,200mm以上なら幅の中心線上で長さ方向の1/3の箇所です。

寝起きの体の痛みは原因がひとつではありません。マットレスの状態だけで決まるものではないので、続くようなら医療機関にご相談ください。

買う前に確認しておきたいこと

1. 保証年数より先に、へたりが対象かを見る

「30年保証」でも、へたりが除外されていれば、へたりでは使えません。保証規定の「保証対象外」の欄を先に読んでください。

2. 判定基準が数字で書いてあるか

「著しい凹み」だけでは、どこからが著しいのか分かりません。 「芯材の20%以上」のように割合や寸法が書いてあるほうが、あとで揉めません。

3. フレームとの組み合わせ条件があるか

フランスベッドのように、自社フレームとセットで使うことが保証の条件になっている場合があります。 マットレスとフレームを別の会社で買うつもりなら、先に確認してください。

4. 買ったときの厚さを控えておく

20%の判定をするには、元の厚さが必要です。 商品ページの厚さを保証書と一緒に保管しておくと確実です。なお厚さは表示にも幅がある項目で、そちらはマットレスのシングルは何cmかの記事にまとめました。

まとめ

マットレスの寿命について、調べた結果はこうなりました。

JIS S 1102(住宅用普通ベッド)が決めているのは、80,000回加圧してへたり量が40mm以下という「回数」の基準です。年数は書かれていません。1,000Nを160回/分でかける試験で、80,000回は8時間20分で押し終わります。

この規格を作った全日本ベッド工業会の認定基準にも、年数はありませんでした。 衛生マットレスは衛生と環境、フレーム環境基準は強度で、耐久性はやはり「8万回」と回数で書かれています。

そして「◯年保証」は、へたりを保証しているとは限りません。 ニトリは30年保証をスプリング部分に限り、規約で「クッション材のへたり」を除外しています。フランスベッド販売も「へたり、におい、軋み音は保証の対象外」と明記しています。

逆に、へたりを正面から保証している店もありました。 快眠タイムズはマットレス5点すべてに「芯材の20%以上の著しい凹み」という判定基準と年数を書いています。

「寿命5〜10年」という数字の出どころは、探した範囲では見つかりませんでした。 使えるのは、芯材の20%という割合と、元の厚さの2つです。買ったときに厚さを控えておくのが、いちばん確実な備えになります。

そして買い替えるとき、次のマットレスは自宅で試せます。 ただし「120日間お試し」と書いてあっても、返すときに7,500円かかる会社と0円の会社があります。マットレスのお試し期間を11社で調べた記事に、11社ぶんの条件を表にしました。

へたってくると、ボックスシーツが余るようになります。 シーツ側の「マチ」と「対応する厚さ」が別の数字であることは、ボックスシーツのマチを調べた記事にまとめました。

寝具の数字の読み方は、ほかにも記事にしています。硬さの「◯N」は測り方が5種類あることを高反発・低反発の記事に、サイズ名と実寸のズレはシングルは何cmかの記事に、羽毛のダウンパワー(=羽毛のふくらみやすさを表す数字)はゴールドラベルの記事にまとめました。

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この記事の出典

この記事は、JIS S 1102(住宅用普通ベッド)でマットレスの耐久性がどう決められているかを試験方法まで読み、そこに年数の記載があるかを確認したものです。あわせて規格を制定した業界団体の認定基準を読み、実際に売られているマットレスの保証規定を販売元4社ぶん突き合わせました。

すべて2026年8月9日に確認しました。

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